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幼馴染との恋愛について1
- 2011/09/05(Mon) 20:54 -
生まれたときから自分の家の隣には食堂があって、その食堂には自分と同じ年の男の子がいた。食堂は彼のお父さんが始めた店で、彼は毎日そこの手伝いをしている。
その食堂には母親がいないのだが、私の物心ついたときからいないので原因はわからないし特に聞こうとも思わない。最初からその状態なので私は彼のうちには母親という存在のものがいないのだと認識していた。

生まれた月で言えば私の方が彼よりも若干年上なのだが、それを加味しても彼は少し幼い気がしないでもない。小学校や中学校は一緒に通ったが、高校からは離れたので彼がどんな高校生活を送ったのかは知らない。しかし想像するに容易い。そういったタイプの人間だった。



彼の名前は智行と言った。智は中学に上がるのと同時に食堂の厨房にも入るようになっていた。智は漢字や数式を覚えるよりも食堂のメニューを覚える方が早かった。
中学に通っている頃は毎朝智を迎えに行った。すると彼はすでに支度を終えていて、玄関先で私を待っているのだった。おはようと声をかけると無表情でおはようとオウム返しのように返事をし、また無表情で私にお弁当を差し出す。それは智が毎日私のために作る弁当だった。智は私に食べて欲しいからと毎日弁当を作るようになった。それがどんな感情を伴っているのかは智自身把握しきれていないようだったし、私も聞かなかったのでその弁当はそれから現在に至るまで続いている。弁当は智が食堂のメニューを覚えるたび豪華になっていった。


私の隣に智の家の食堂兼自宅が建っており、そのまた隣にこれまた同じ年の男の子が住んでいる。その子の家はうなぎ屋さんだった。うなぎ屋さんちの息子は臼井くんと言う苗字だったのでそのまま臼井くんと呼んでいる。
呼び名でわかるように、私は智とは兄弟のように身近で育ってきたのに対し、臼井くんとはそこまで深い付き合いがあるわけでもない。但し智は同じ年の男の子同士、臼井くんとは私とはまた別に仲良く過ごしているらしかった。臼井くんはなんでものんびりこなすタイプだった。智ものんびりしているタイプだが、臼井くんはそれに付け加えておおらかで人の好意を三倍くらい大きく受け取るお人よしでもあった。智は物事を良くも悪くも真正面からしか受け止められないタイプだった。


智と高校が離れたのは当然のことだった。智は地元のあまり賢くない高校へ行かざるを得なかった。私は地元からあまり離れていないまぁまぁの高校へ入ることが出来た。臼井くんも同じ高校だった。てっきり智と同じ高校へ行くのかと思っていたら智よりも勉強が出来たらしかった。
高校離れてさみしいねと智に言ってみた。智はそうかな?というような顔したあと気を使ったのか「うん」とお世辞のような返事をした。智は特に何も思わなかったらしい。そんなもんかなと思った。
高校に合格したときに親に携帯電話を買ってもらった。智に番号を教えたが智は持っていないので、その辺のどうでも良さそうな紙に書いていた。隣なので電話で話すようなことは何もないまま高校の入学式を迎えた朝に、初めて智の自宅から携帯に着信があった。
「茶智ちゃん、お弁当いる?」
いつものぶっきらぼうな声だった。
「入学式だから欲しいのかわかんないな」
「作ったからあとで寄って。食べなかったら残していいよ」
それから毎日、高校が離れても相変わらず彼の手作り弁当は休むことがなかった。

臼井くんとは同じ高校に通っていたが同じクラスになることはなかった。たまに廊下ですれ違っても彼はにっこり笑って会釈してくるぐらいだった。臼井くんは身長も高いのでくまみたいだなと思っていた。ちなみに智は私とそんなに身長は変わらない。

智は高校に入っても部活をやらずにまっすぐ帰宅した。食堂の手伝いをしていたのでいつもどこにも寄らずにいるらしかった。遊んだりしたくならないのかと聞いたことがあったが、智は特別不満を持ったこともないと言う。それはそれですごいなと思った。私は部活こそしなかったが高校で出来た友達と遊びに行ったり極々普通の高校生活を過ごしていた。

高校に入って別々の時間を過ごすことが多くなるのと比例して、智からの電話が増えていった。智も自分で携帯電話を購入したらしく、智からの着信はもっぱら帰宅に近い時間帯に集中した。内容はなぜかほとんどが帰宅の報告だった。今から帰るということだけを私に告げるのだ。私は気をつけてねと返事をするだけだった。
雨が降った日も必ず電話を寄こした。
「茶智ちゃん、傘持ってる?」
「折りたたみ傘持ってるから大丈夫だよ」
「わかった」
一度傘を持っていないことがあったのだが、智にそれを告げても「わかった」という同じ返事だったことがある。傘を持っているのかと確認するわりには、傘を持っていなくても特別届けてくれるとかそういったことはないのだ。その日は濡れながら帰った。

帰宅して濡れた髪をタオルで拭いていると、智が私の部屋にやってきた。
「おかえり」
「ただいま。どうしたの?」
「茶智ちゃん、濡れた?」
「うん。傘持っていくの忘れちゃったからね」
無表情で頷いた智は、左手に持っていたタオルを私に差し出した。
「なに?」
「茶智ちゃん濡れてると思って」
「……ありがと。これで体拭くね」
「うん。俺手伝いあるから戻るね」
タオルは私の家にもあるのだが、とツッコんだら負けなのだろうかと思いながら階段を下がっていく智の背中を見送った。いつの間にか私よりもがっしりとした体つきになっていた。あくまで私と比べて、という程度だが。




つづく
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