わがままをゆるして
- 2010/09/27(Mon) 19:13 -
さっきPCのメールフォルダをチェックしてたら一年半くらい前に書いてた書きかけの小説が出てきて、なんの話だっけ?と読み返していたらけっこう長くて、このまま廃棄するのももったいない気がするので、ブログに上げることにしました。
完結してません。
ちなみに、オチをどうするかとかもう思い出せなくて続きも書けないです。というより、この話の花道が私は気に入らなくて途中でやめたことを思い出しました。なのでもう完結はしません。
暇つぶししたい方だけよかったら続きからどうぞ。


わがままをゆるして


好きだよ、そう言われて、俺も好きだと返そうとしたが花道にしては珍しく聡く、開きかけた唇をまた閉じる。
そういうことではない気がするという予感通りに洋平がおまえにはわからないと嫌味のように笑った。
好きだという感情を、女の子に対して好きだと思うとき、同性の友達に対して好きだと思うとき、その二種類しか知らない。
「どういう、意味」
「聞くの、おまえが?それを?わかったくせに?」
だけど洋平のことは一番好きだし親友だと思ってるし俺なりに大事だと思ってる。
だけどそういう意味でないのなら、なにも及びつかないのだった。
「返事は?花道」
洋平がはなみちと声に出すときたまに特別な響きを残していた理由がようやくわかった。
答えはNOだ。
「……むり…」
「そう言うだろうともわかってたけどね」
おうちへ帰んなさいとにっこりあやされて、今度こそいやだと言う資格はなかった。




しまった、という顔をした野間の頭を、大楠がスパーン!ときれいに横殴りした。
わりと要領の良い高宮は咄嗟にそっぽを向いて我関せずという態度を取る。
花道の追求は野間と大楠に向かった。
「また!?」
「…またっていうか、またってことになったのは前回おまえがぶち壊したからで」
野間にしては本日余計な一言が多い。
大楠からまたも無言の横殴りという牽制を食らって頭をがくんとうなだれさせる。
面倒なことが嫌いな大楠は、野間への非難を眉間の皺に集めて舌打ちをする。
花道はそれに全くかまわなかった。
「なんで!なんであいつ彼女作んの!?俺はどーなるんだよおかしいじゃん!」
おかしいのはおまえだと、全員が思ったが誰も言わなかった。
洋平に彼女が出来たのである。
またというからには仲間内で知る限り二人目だったが、洋平はああ見えて聞けばあっさり教えてくれるので恐らく本当に二人目なのである。
ただし前回は誰かさんのせいで一ヵ月と持たなかったのだ。
ここにいない人物をこんこんと責めてもどうしようもなかんべと、三人に投げ遣りに返されてようやく花道は口を閉じた。




洋平に彼女ができるのが許せない。
なぜなら洋平はいつも自分を最優先してくれて、望むことを望む通りにしてくれるからだった。
そもそも自分にさえまだ彼女ができていないのに、なぜ俺を差し置いて先に彼女を作るのか、それすら若干癪に触る。
それでも、この前一番目の彼女が出来たときは素直に応援してやろうと思ってはいたのだ。
仲間だから。
冷やかすのはお茶目だと思って欲しい。
ちゃんと好きで付き合うのなら、長く続けばいいなと、本人には言わないけどみんな思ってる。
だけどそれは二週間も持たなかった。



「───は?」
「だから来週は行けないよって」
「ちげーぞ、パチンコとかじゃねえ、俺の試合があるんだぞ」
「…だから、それでも無理なの」
なんで、と声を荒げた花道に洋平が目も合わせずため息をつく。
薄々わかってはいたけど、洋平の口から彼女がという単語が出た瞬間決定的なものになった。
「この前もじゃん!最近はろくに部活も見にこねーし!前はいっつもちょっとだけでも部活見にきたり試合は必ず三人で来てたじゃん!なんでいきなり彼女とか言うのなんで彼女作ると俺と遊ばなくなんの!?なんで俺のそばにいるより友達でもなんでもねぇ彼女といるの多くなってんだ!?」
「そーゆうもんなんだよ」
二回目のため息をつかれて思わず殴っていた。
いつもならどんなに無茶なことを言っても最終的には許容してくれていたので、俺を切り捨てる洋平なんか死ねばいいと思った。
ちょうどそこに件の彼女とやらがやってきてえらそうに俺に向かって洋平を殴るなとかなんとか言ってきたので、頭に三倍血が昇って思いっきり喧嘩口調でうるっせえと怒鳴ったら、それだけで泣いてさらに洋平に肩を抱かれて反対側の腕で俺の頬を少し強く叩いた。
初めて女の人を泣かせてしまったけど、泣かせた女は洋平の彼女というポジションにいるだけで泣かせる価値はあったと思った。
思って、そんな考え方をする自分に心底驚いて呆然とした。
泣きたいのは俺だ。



それが原因かは知らないけど結局洋平はその彼女と一ヵ月もしないうちに別れていて内心万歳サンショウである。
最初の頃はなんとなく罪悪感があったけれど洋平は相変わらずだったので、俺もそのうち忘れることにした。
また帰りに部活を見にくるようになったし、試合も欠かさず来てくれるようになった。
すべて元通り。
やはり洋平は親友の名に恥じぬように俺に優しくなければいけない。
洋平は俺のことはいつも特別に扱ってくれた。
そうして幾らかの時間をかけて元通りになった矢先である。
また彼女第二弾だと言うではないか。
よっぽど頭にきたので、部活帰りにそのまま洋平の家へ向かう。
なにが楽しくて彼女なんぞ作るのかわからない。
確かに俺は晴子さんが好きで彼女になって欲しいけど、それで洋平と遊べなくなるのならそんな新しい関係はいらなかった。




街灯が道路の端で等間隔に揺れている。
吐く息の白さで視界が見えにくくなる。
ポケットに手を突っ込んで、洋平の家へと足を早めた。
着いた頃には耳が痛かった。
「ようへえ~入れて」
ドンドンとドアを叩いて叫ぶとしばらくしてドアが開く。
冬だというのに洋平は半袖一枚で出迎えてくれた。
一歩足を踏み入れて、なるほど半袖でも充分だなと思うほど暖かくなっている室内の空気が全身に張り付くようにたゆたんだ。
「彼女は?いないな?よーしよし」
「…帰ったよ」
用件を察していたかのような洋平が、ほとんど乱れていた髪を掻き上げる。
うっとおしさも隠そうとしない仕草で煙草に火を付けた。
「花、今日勘弁して」
「なんで」
「疲れたから」
「なんでっ」
「セックスして、疲れたから」
ふっ、と、軽く煙を吐きながら「知ってる?」とそう言った。
───冗談。
冗談。
なにセックスって。
そういうのもすんの。
そういうのまだ早いんじゃないの。
そういうのって、好きな人とするもんじゃねーの。
一生すきなひととすることなんじゃねえのそれ。
「な…、いっしょ…それ、その人、一生好きなの?」
「はぁ?」
「だから、そんなことして…だから、俺と一緒にいなくなっ…」
はなみち、と呼んだ。
不思議なことだ。
このひとの声は目ん玉の裏っ側に直接響くことがある。
そのとき大概俺は悪者にされる。
「いつまでもおまえのことだけ優先してられないよ」
暗転。
叩かれるのだと思っていた。
それを覚悟できた。
頬の痛みと引き替えに彼女と別れてくれるもんだと思っていた。
結局彼女よりも俺を優先してくれると思っていた。
友達だと、こうして離れていかなきゃいけないの。
「も、もう一生その人…?」
「なにが?」
「もう洋平の好きな人は一生そのひとなんか…?もう変わんねえ?」
「好きなわけじゃないよ。そういうのなら他にいるし」
「は?ほか?…は?」
「言わせるぐらいさせろな。おまえだよ」
は?と、言おうとして、やめる。
洋平が見たことない程無機的な笑顔で、おまえと、もう一度言う。
「好きだよ。知らなかったの。俺はおまえのことが好きで好きでさ。知ってたろ」
あぁ、そう。
悪者にされる意味がわかった。
「帰んなさい」
洋平はぴしゃりと言い放つ。



結局洋平はまたすぐに彼女と別れた。
また万歳サンショウである。
今回は頬の痛みではなく、二人の間の秘密という罪悪感との引き替えだった。
お安い御用である。
「また別れたな洋平」
「おまえなんか言ったんだろ花道」
大楠と高宮に問い詰められたが、なんにもしてないと首を振る。
嘘をついている素振りがなかったので二人はおかしいなと首を傾げた。
「性の不一致か!」
ギャハハと下品な冗談で笑う大楠と高宮を不快そうに眺めながら、頭の隅で洋平が屋上に来るのを待っていた。
しかし洋平は次の日も一週間後も現れなかった。



「洋平!」
ようやく昇降口で捕まえた洋平に声をかける。
彼女と別れて一ヵ月は経つというのに、今回は以前のように元には戻れずにいる。
焦った花道が直接本人に理由を問いただそうと探しに探して、ようやく帰り際の洋平を捕まえた。
声で察したのか洋平は振り向きもせずに靴を取り出して穿き始め、花道はなお焦った。
「か、帰るんか?」
三秒待ったが無言の肯定をされる。
「ぶ、部活見に来て」
「行かない」
はっきり告げられては取りつくシマもない。
変な汗を掻き始めた花道が、ようやく事態の大きさに気付いた。
「な、なんで、なんで俺と話ししてくんねぇの?なぁ…せっかくさぁ…」
もう一人なんだから。
とは、さすがに言わなかった。
「早くツルもうぜ、な?俺洋平といんの一番好きだし」
そう、言うか言わないかのうちに、洋平が下駄箱のスチール扉を思いっきり閉めた。
辺りがしんと静まり返る中、花道の見開かれた目と、洋平の侮蔑のこもった目とが、わずか一ヵ月ぶりにかち合った。
「わがまま言うな」
そう言って下から舐めるように目線を上げる、あのタイマンのときのような独特の目線を受け止めて、踵を返した彼の背をなにも返答できずに見送った。
なにを言われたのか、理解するまでにいつだって時間がかかる。
わがまま。
なにが。
いったいなにがわがままだと言うのだ。
今まで部活を見に来いと言っても、試合を応援しに来いと言っても、腹が減ったとわめいたり夜中淋しいとこぼしたり今すぐ時間の許すかぎり隣にいてと望んだり、今までなにをどんなときに言っても一切わがままだとは言われなかった。
それを言われたことがなかった。
自分でわがままなのはちゃんとわかっていたのに、洋平は一回もそうだと肯定してくることはなかった。
「おま…なに言ったんだよ?」
目撃していたのか、野間がそろそろ背後からやってきた。
「なに、なんも、べつに、早く遊ぼうぜって」
「おまえばかだな」
野間にも言われて、目を見開いた。





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なんとこれでオワリである!!(笑)失礼しました!
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